Page:Insect Literature by Lafcadio Hearn.djvu/49

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になつて居る、奇妙な話は、陸奧の方言では蝶といふ意味である。古典時代には此話はまた美女といふ意味も有つて居つた。.........

蝴蝶に關する日本人の奇妙不思議な信仰のうちで其源を支那に發して居るものがあるといふことはまた有りさうなことである。がそんな信仰は或は支那そのものよりも古いものかも知れぬ。一番趣味ある信仰は生きて居る人間の魂が蝶の姿になつてさまよひあるくことがあるといふのだらうと自分は思ふ。此信仰からして面白い空想が發展し來つて居る。例へば、蝶が客間へ入つて來て、葮戶の裏へとまると、一番好いてる人が會ひにやつて來るといふ考などそれである。蝶は誰かの魂かも知れぬといふ事は、蝶を恐がる理由にはなつて居らぬ。が然し、蝶でも、非常に澤山に出て來て、それで人の恐怖心を惹起し得る時がある。現に日本の歷史にそんな出來事の記錄がある。平の將門が、その有名な謀反を私かに準備して居る時に、京都に莫大な蝶の群が現はれたので、時の人はこの出現を凶兆と考へて大に畏怖した。.........多分その時の蝶は、戰に死ぬる運命を有つて居つて、そして